本ブログでは、2022年以降の革新的なエネルギー技術の動向と考察を解説しています。モデルベースエンジニアリングに20年以上の経験を持つ弊社のエネルギー・プロセス分野のディレクターであるStéphane Velutが、エネルギー技術の動向、考察、及び見通しについて、シミュレーションソフトウェアがどのように世界をリードする企業の発展を可能にしているのか、業界の現状に焦点を当てながらご紹介します。

気候変動を緩和するために、各企業はCO2排出量の大幅な削減を目標として掲げています。また、政府やエネルギー企業は、化石燃料から脱却し、再生可能エネルギーに投資するようになりました。モデルベース設計とシステムシミュレーションは、イノベーションを支援し、これらの大規模なプロジェクトがもたらす、高額なコスト投入を抑える役目も果たしています。ここでは、モデロンが注目、そして支持する2022年以降のエネルギー技術の新潮流をご紹介します。

The Design “V”: How model-based engineering and system simulation help support innovation of energy technologies projects
図1: エネルギーシステムのイノベーションをサポートするV字モデル

TREND 1: エネルギー業界はカーボンニュートラルに注目

風力や太陽光発電などの成熟した低コスト再生可能エネルギー技術への大規模な投資により、エネルギー業界は脱炭素化をリードしています。電力システムの安定性を損なうことなく、再生可能エネルギーの急速な導入をサポートするため、現在は化石燃料を用いた火力発電所を含む発送電分離装置が電力の生産と需要のバランスを取っています。大規模なエネルギー貯蔵システムが一般的になるまで、この状況は続くでしょう。既存資産のCO2排出量に対応するため、エネルギー会社は二酸化炭素回収・貯留の技術に再び関心を寄せています。

二酸化炭素回収・貯留は、CCSとも呼ばれ、二酸化炭素が大気中に放出される前に回収し、貯留場所に輸送し、数年間隔離するプロセスのことです。液体アミン系溶媒を用いた燃焼後のCO2吸収は15年前から注目されてはいましたが、残念ながら補助金や炭素税がないため、期待されていたペースで商業展開がされてきませんでした。しかし、現在、この状況は変わりつつあります。電力会社は現在、CCSのコストを見積もり、発電量の減少や過渡運転時の制約など、発電所への影響を最小限に抑えながら安定したCO2除去率を可能にするため、大学などの工学研究科や民間機関へ依頼をしています。

Standard amine absorption process
図2: 標準的なアミン吸収工程

CCSに関連する概念として、CCUS(Carbon Capture, Utilization, (Usage), and Storage)があります。CCUSとはCCSと同じ考え方ですが、炭素を貯留する代わりに、プラスチックやコンクリート、燃料に変換して産業素材として再利用します。ディーゼルやメタンなどの合成燃料の生産には、点源捕捉の代わりに直接分離・回収する「DAC技術」を使うことも可能です。DAC技術利用はまだ初期段階ですが、あらゆる分野の企業によって検討されている方法です。なぜなら、既存の炭化水素インフラを活用しながら、運送業界をカーボンニュートラルにする可能性を秘めているからです。炭素回収は、気候変動対策に必要な技術として認識されていますが、主な課題は商業的な展開です。多くの企業は、CO2排出削減の目標を達成するために、モデルベースの設計とシステムシミュレーションを利用して、コスト効率のよい導入方法を検討しています。

TREND 2:注目されるエネルギー技術ストレージシステム

エネルギーには機械的、電気的、熱的、化学的などさまざまな形態があるため、エネルギーを変換、貯蔵する手段や技術は多岐にわたり、かつ豊富に存在します。

Large scale energy storage systems
図3: 大型蓄電システム

エネルギー貯蔵システムは、再生可能エネルギーを広く普及させるために重要な成功の鍵として注目されています。電力用途の蓄電プロジェクトの主な目的は、再生可能な電力の余剰分を貯蔵し、後で使用することです。企業にとっての課題は、これらの蓄電システム構築のために、標準的な部品や材料を用いて、安価で効率的、かつ拡張性のある、発送電可能なソリューションを見つけることです。

エネルギー貯蔵システムを優先的に予算化する企業が増える中、熱エネルギー貯蔵(TES)システムは、これらの企業にとって、リーダー的存在です。TESは冷暖房用途(power-to-heat)だけでなく、熱を貯めて電力に変換する用途にも関連します。高温で貯蔵された熱は、既存の火力発電所で使用されているような標準的な熱機関を使って効率的に電力に変換することができます。安価に、そして大規模に熱を貯蔵する方法として、コンクリート、石、砂、溶融塩などが検討されています。TESシステムが発電に使用される技術の例としては、以下のようなものが挙げられます。

   1.         揚水式発電:再生可能エネルギーをヒートポンプで熱に変換し、ヒートエンジンで再び電力に変換します。

 2.          集光型太陽熱発電(CSP):太陽熱を集光し、熱として蓄積し、熱機関を使って電力に変換します。

 3.       伝統的なボイラーの改良 –  既存の発電所にTESを設置し、グリッドからの再生可能な電力を熱として貯蔵し、

     設置された蒸気サイクルを使って再び電力に変換します。

Concentrated solar power (CSP) tower
図4:集光型太陽熱発電(CSP)タワー

上記のすべてのソリューションは、ポンプ、バルブ、タンク、タービンなど、多くの標準的なコンポーネントの組み立てを伴い、スマートな方法で設計・制御される必要があります。システムシミュレーションは、最適なシステム構成を選択し、通常運転(起動、停止、充電、放電)または故障モードに対する制御戦略を導き出すのに非常に適しています。

TREND 3: 水素がもたらす未来

トレンド1と2を同時に解決するために、多くの企業が宇宙で最も豊富な元素である水素に着目しています。水素は非常に汎用性の高いエネルギー源であり、多くの既存技術に代わる、より持続可能で長寿命の代替手段をあらゆる産業にもたらす可能性を秘めています。

図5:水素バリューチェーン
図5:水素バリューチェーン

各国政府は水素関連プロジェクトに多額の投資を行っており、今後、重要な研究開発作業が期待されています。部品やシステムレベルの設計・シミュレーションツールは、エンジニアが開発期間を短縮し、バリューチェーンの各段階で正しい判断を下すために非常に有効です。

コンポーネントレベル

コンポーネントレベルでは、効率性、安全性及びコストの面で設計を改善することが一般的に求められています。最も困難な課題は、電解槽でのグリーン水素製造のコスト低減です。近い将来、メタンの水蒸気改質とCCSを組み合わせた水素製造(トレンド1参照)が、持続可能性とコストの良いトレードオフであることは明らかです。

利用面では、エネルギー会社がガス火力発電所における燃料としての水素の割合を増やすことを計画しています。こちらは、前回のブログ、”水素発電”の中で説明したように実現可能です。さらに、定置用および移動体用の燃料電池は、性能の向上と製造コストの低減を目指しています。システムシミュレーションは、空気や燃料の供給から水や熱の管理に至るまで、燃料電池の全体的な設計や制御を改善するのに役立ちます。

Solid Oxide Fuel Cell stack with auxiliary systems in Modelon Impact
図6: Modelon Impactを使った固体酸化物形燃料電池スタックと補助システム

システムレベル

システムレベルでは、意思決定者が水素技術への移行コストを評価し、最小化するのに役立つツールが必要です。移行は慎重に行われ、様々なハイブリッド構成やエネルギー技術を検討する必要があります。以下に挙げるのは、意思決定者らがシステム設計とシミュレーションに解決させたい事象への質問例です。

  • 電解槽と水素の現在の価格と予測価格に基づき、水素は現地で生産したほうがよいのか、それとも購入したほうがよいのか?
  • 私の地域の再生可能エネルギー源から得られる余剰エネルギーを貯蔵するために、水素または電池のどちらを選ぶのが最適か?
  • 政府のインセンティブ、再生可能エネルギークレジット、あるいは炭素税が最適な投資に与える影響はどのようなものでしょうか?既存の化石燃料資産でカーボンニュートラルに迅速に到達するためにCC(U)Sに投資するのが良いのか、それとも水素ベースのソリューションに直接移行するのが良いのか?
Hydrogen energy technology system model in Modelon Impact
図7:Modelon Impactを使った水素システムにおける技術的・経済的実現可能性評価のための水素システムモデル

エネルギー技術動向の結論

エネルギー技術は、地球の持続可能性と二酸化炭素排出量の削減に大きな役割を果たします。CCS、DAC、エネルギー貯蔵システム及び水素技術は、2022年以降の革新的なエネルギーソリューションとしてますます注目を集めています。

モデルベース設計とシステムシミュレーションは、将来のエネルギー消費を改善するために、大規模なプロジェクトの設計と最適化を計画するイノベーターを支援します。モデルベース設計とシステムシミュレーションが、貴社のエネルギー効率を高めるためにどのように役立つかについては、今すぐ弊社にお問い合わせください。