Aircraft Fuel Tank Systems
Modelon Fuel System Library

本ブログでは、航空機燃料タンクの不活性化システムモデルの設計とシミュレーションに焦点を当て、エンジニアが燃焼と可燃性のリスクを低減できるよう解説をしていきます。これは、Modelon Impactで利用可能なモデロンの燃料システムライブラリによって実現します。こちらはブログシリーズのパート2となっており、航空機燃料システム、そして航空機燃料タンク内のコンポーネントのモデリングとシミュレーションに焦点を当てています。

航空機燃料タンク不活性化システム設計

現代の航空機では、民間機、軍用機を問わず、燃料タンクは単に燃料を貯蔵するために使用されるだけでなく、エンジンから発生する熱を放散するサーマルシンクとしても機能します。燃料タンクの不活性化や燃焼性などの熱研究も行える燃料システムモデルの構築には、工学的な専門知識が必要です。不活性化システムは、タンク内の酸素レベルや燃料上部の空気量を減少させて可燃性を下げることを意図しており、燃料システム設計の一部として不活性化システムを構築・検証することは、安全上非常に重要です。業界をリードする燃料システムライブラリを搭載したModelon Impactにより、エンジニアは、燃料タンク、パイプ、ポンプ、およびその他の部品やシステムの事前に構築されたコンポーネントを使用してシームレスにモデルを構築し、自信を持ってシミュレーションと検証を行うことができます。

燃料システムモデルは、航空機の翼内にある一連の燃料タンクで構成されます。燃料の偶発的な燃焼を避けるため、窒素富化空気(NEA)を供給してタンク内の酸素の割合を減らし、不活性化を行います。燃料-空気媒体は、蒸気、酸素、窒素、ジェット燃料で構成されます。図1は、燃料システムモデルの不活性化スタディの概略図を示しています。

システムには、ベントタンク、ウィングタンク、センタータンクの3つの燃料タンクがあり、これらのタンクは、ベントタンクの原点がウイングタンクの原点よりも高く、センタータンクの原点よりも高くなるように配置されています。各タンク内の気体を平衡化するため、パイプ8とパイプ9がタンク間に接続され、液面より高い位置に配置されており、ベントタンクからウイングタンクへ、ウイングタンクからセンタータンクへ燃料を移送するために、タンク間にポンプが配置されています。そしてエンジン(sink_engine)は、一定流量の燃料を消費する単純なシンクとしてモデル化されています。

The inerting study
図1:燃料システムモデルの不活性化スタディ

システム概略図は、燃料システムライブラリの既成コンポーネントを使用して、Modelon Impactで素早くモデルに変換することができます。図2は、3D配置と初期化データに関する情報を含むセンタータンクのパラメータインターフェースを示しています。

position and fuel mass
図2:タンク位置、タンク内ポート位置、タンク内初期燃料質量のパラメータ設定

システムの高度は 0m から開始し、シミュレーション時間 10s から 600s で 10,000m まで一定速度で上昇させます。圧力源 source_Vent は、ベントタンクの上部付近に接続されており、システムの高度を使用して、圧力源の圧力と温度を決定します。ガスの組成は、質量20%の酸素と質量80%の窒素としています。このベントにより、燃料タンクの圧力は周囲と平衡になり、ガスはベントから出ることも入ることもできます。圧力源source_NEAは、中央タンクの上部付近に接続されており、摂氏20度、周囲圧力より0.1bar高く、酸素質量2%、窒素質量98%に設定されています。以下の図 3 に、燃料システム全体のモデルを示します。

inerting study
図3:不活性化スタディのための燃料システム全体モデル

航空機燃料タンクの3D不活性化モデル

このモデルを3Dで視覚化することは、システムアーキテクチャとフローを分析する上で重要です。Modelon Impactでは、さまざまなシナリオで最適なパフォーマンスが得られるように、モデルを簡単に視覚化して調整することができます。 図4は、システムアーキテクチャの3Dビューを示しています。

System model in 3D view
図4:3Dビューのシステムモデル

この燃料タンクの不活性化スタディの結果は、5,000秒にわたって検討され、アニメーションの一番上のプロットは、各タンク内の燃料の質量を示しています。センタータンク内の燃料レベルは、エンジンに供給されるにつれて時間と共に減少しました。2,500秒になると、センタータンクの空焚きを防ぐため、翼のタンクから燃料を移送するポンプ速度が上げられます。また、3,500秒後、ベントタンクから燃料を移送するため、2台目のポンプ速度も上げられます。

図5の下段のプロットは、センタータンク内の酸素と窒素のガス質量分率を示します。ここで、X_gas[1]は蒸気、X_gas[2]は酸素、X_gas[3]は窒素です。初期状態では、質量分率は周囲条件と同じですが、NEAが燃料システムに供給されるにつれて、センタータンク内のガスは source_NEAの組成に一致します。

タンクやパイプのアイコンアニメーションにもお気づきかと思います。これらの2Dアニメーションは、システムの動作をすばやく理解できるように、特定のライブラリコンポーネントに組み込まれています。

図5:センタータンク内の燃料質量とガスの質量分率のアニメーション

図6に示すように、全タンクの燃料質量を合計することもできます。

fuel mass in the tanks
図6:タンク内の燃料総質量

燃料システムライブラリモデリング機能と特徴

次のセクションでは、生産性を向上させるモデロンの燃料システムライブラリの主な手順を紹介します。

  1. タンク形状をSTLファイルとしてインポート – 燃料システムライブラリのタンクは、タンク形状をSTLファイルとしてインポートすることをサポートしています。STLファイルは、主要なCADツールからエクスポートできます。
  2. コンポーネントを3D空間に配置 – タンク、パイプ、ポンプ、ベンドなど、燃料システムネットワーク内のすべてのコンポーネントは、パラメータ設定することで3D空間に配置できます。
  3. 燃料重心の計算 – 個々のタンクおよびシステム全体の燃料重心は、すべての飛行条件について計算されます。
  4. 燃料プローブをタンク内に設置し、ローカル座標系におけるA点とB点の間の燃料レベルを測定します。
  5. 燃料システムライブラリのほとんどのコンポーネントには、燃料ネットワークを視覚化するための2Dアイコンアニメーションと3Dアニメーションが装備されています。
  6. 燃料システムネットワーク内のパイプやベンドのモデリングは、ライブラリコンポーネントで実現できます。タンクとパイプの間のフランジは、流体力学の詳細で正確なモデリングのために、燃料システムライブラリで幾何学的な位置によりパラメータ化されています。数種類のポンプとエジェクタを使用して、流れを調整することができます。

燃料システム・ライブラリの最新リリース2021.2に含まれる新機能を見るには、こちらをクリック。

燃料システムライブラリについて

Modelon Impactで利用可能なモデロンの燃料システムライブラリは、民間機と軍用機の両方の燃料システムのモデリングを可能にする最先端のModelicaライブラリです。すぐに使える機能が搭載されているので、ユーザはすぐに作業を開始し、生産性を高めることができます。燃料システムアーキテクチャの概略図を、完全に機能するシステムモデルに変換することが可能です。モデロンの燃料システムライブラリは、燃料補給と燃料除去、不活性化、熱伝導計算、熱管理/耐久性、計測と数量推定、燃焼性など、さまざまなシミュレーションを実行することができます。

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