aircraft fuel systems blog

Modelon Fuel System Library

航空機の燃料タンクシステムは、航空機内で重要な役割を果たしています。燃料を貯蔵するだけでなく、サーマルシンクとしても機能し、エンジンから発生する熱を放散します。このブログでは、Modelon Impactを使用した航空機燃料タンクのコンポーネントのモデリングとシミュレーションに焦点を当て、エンジニアが民間機と軍用機の両方で燃料システムを詳細に解析できるようにします。これにより、生産性が向上し、数値的不安定性のないロバストなシミュレーションが可能になり、マルチレベル計算手法により非物理的な工学的仮定を回避することができます。このブログシリーズのパート1「燃料タンク不活性化システム」では、安全性を確保するための先進的な航空機燃料システムの設計と検証に焦点を当てています。

燃料タンクシステムにおける燃料流量の課題

前回のブログでは、民間航空機のハイレベル燃料システム構成図を設計し、検証しました。ここからは、燃料の流れや燃料の燃焼性など、システムの具体的な側面について見ていきましょう。燃料タンクは翼の中に配置されるため、翼のリブは最終的にタンク内の空間を制限し、流れの挙動に大きな影響を与えます。燃料の流れのような観点を詳細に解析するためには、タンクシステムのオリフィスと穴を考慮する必要があります。ポンプが作動するいくつかのシナリオでは、戻り流を制限し、タンクへの燃料の逆流を避けるために、穴にフラップバルブが追加されます。

2つの大きなタンク(容積)と大きな穴の直接的な結合は、圧力(p)、温度(T)、および気体/液体の質量分率(Xi)の状態がタンク内に存在する場合、数値的に解くことが困難な方程式を導くため、このようなシステムを詳細にモデリングすることは非常に難しいです。このような方程式系を扱うために、index reduction(微分次数低減)のような数式処理技術が利用可能ですが、優れたシミュレーション性能につながる物理バランス方程式のより良い書き方があります。Modelon Impactは、数値的不安定性をスマートに回避し、効率的なマルチレベルタンクをモデル化するコンポーネントと機能を備えています。このブログでは、複数の流域を持つ燃料タンクのモデリングの詳細な手順を紹介します。

適切なコンポーネントによるマルチレベル燃料タンクのモデリング

図1のモデル概略図に示す単純なマルチレベル燃料タンクから始めましょう。主なコンポーネントはタンクとオリフィスです。タンク1とタンク2は穴またはオリフィスで接続されています。燃料の流れは、加速度ベクトルの変化に基づいて、またはポンプによって発生します。このような2つのタンク(容積)が大きな穴で接続されている場合の課題は、「マスター・スレーブ」のアプローチで対処できます。複数のタンクを組み立てる場合、そのうちのひとつをマスタータンクとします。他のタンクはすべてスレーブタンクとして割り当てられます。マスタータンクはp、T、Xi状態の平均値を計算します。平均化された状態量は、特徴的な集中コネクターを通して、スレーブタンクに渡されます。

Schematic of a simple aircraft multi-level fuel tank system
図1:単純なマルチレベル燃料タンクの概略図

図2は、Modelon ImpactのFuel System Libraryのコンポーネントを使用して組み立てたマルチレベル燃料タンクのモデルです。タンク同士がオリフィスで接続されている場合、Modelica の自動ルート解探索機能に基づいて、タンクの 1 つが自動的にマスターとして決定されます。マスタータンク内では、温度、圧力、質量分率などの変数の平均が決定され、集中コネクタを介して伝達されます。 タンク内の穴の位置は、STL 形式の CAD ジオメトリから読み取られ、オリフィスコネクタを介してパラメータ設定されます。

Modelica model of an aircraft multi-level fuel tank
図2:マルチレベル燃料タンクのModelicaモデル

図3は、オリフィスを通過するガス挙動モデルの忠実度の違いを示しています。オリフィスのサイズに基づき、ガス通路は部分的に制限されるか、完全に制限されます。

Different fidelity of gas passage through the orifice aircraft fuel system
図3:オリフィスを通過するガス挙動モデルの忠実度の違い

Modelon Impactにおけるシミュレーション性能

物理モデルが構築できたら、加速度ベクトルを変化させて動的挙動をシミュレーションすることができます。図4は、両タンクにおける燃料とガスの質量変化を示しています。

Simulation results of fuel and gas flow variation in the tank and through the orifice
図4:タンク内およびオリフィスを通過する燃料とガスの流量変化のシミュレーション結果

この結果は、以下のようにシステムの3Dアニメーションを使ってさらに可視化することができます。加速度ベクトルの変化に基づいて、燃料はタンク1を出てタンク2に入ります。オリフィス内の矢印は、オリフィスを通る燃料とガスの流れの方向を示しています。

3D visualization of an aircraft fuel system
アニメーション1:航空機燃料システムの3D可視化

さらに、Modelica言語のパワーを活用して、モデルの忠実度を素早く変更し、さまざまな解析を実行することができます。Modelicaの “replaceable-redeclare”(置換可能な再宣言)の概念を使用すると、上で使用した同じモデルを、通常のオリフィスの代わりにフラップ弁を持つように更新することができます。フラップ弁は、単一方向の流れを許容し、反対方向の燃料の流れを遮断します。図5は、フラップ弁を備えたマルチレベルタンクモデルです。

Model with flap value enabled instead of an orifice
図5: オリフィスの代わりに有効なフラップ弁w用いたモデル

図6は、このようなモデルのModelicaコードを示しています。強力なモデリング言語を活用して、数行のコードでモデルの忠実度を変更することができます。ここでは、図2のモデルを再利用しています。「Orifices.FlapValveを再宣言する」コードを追加するだけで、モデルの動作が変わります。このアプローチは、重複したコード行やモデルを維持する手間を省くのに役立ちます。

Modelica code for a model with flap valve
図6:オリフィスの代わりにフラップ弁を再宣言したモデルの Modelica コード

3Dアニメーションを見ると、燃料の流れはタンク1からタンク2に向かってのみ起きており、タンク2からタンク1への戻り流は確かに遮断されています。この可視化により、エンジニアはシミュレーション結果を直感的に確認することができます。組込まれた3D可視化による定性的な洞察を補完するために、時系列結果はもちろん様々な種類の定量プロットで利用できます。

Animation of fuel flow from tank 1 to tank 2
動画2:タンク1からタンク2への燃料の流れの3Dアニメーション

結論

Modelon Impact logo

Modelon Impactは、民間機および軍用機の複雑な燃料システムのモデリングを可能にします。既製の主な機能により、ユーザーはすぐに作業を開始し、生産性を高めることができます。エンジニアは、このブログのマルチレベル燃料タンクシステムで示されているように、仮定を回避し、信頼できるデータをよりよく実装することができます。 燃料システムについて、事実上あらゆる運動とそれに対応する加速度ベクトルを設定し、幅広いポスト処理機能により、3D可視化やカスタマイズ可能なプロット機能を通じて、直感的かつ定量的な洞察を得ることができます。デモをお申込みいただければ、燃料システム・エンジニアリングのあらゆるニーズに対応する方法をご紹介いたします!