サーブ社は、モデルベースシステムエンジニアリング手法をモデロンに統合し、オープンスタンダードの技術サービスとプロジェクト提供を実現しています。  

サーブ社製航空機グリペン

1988年、スウェーデンで開発された初の多機能戦闘機として、グリペンは歴史にその名を刻みました。この高機能航空機は、高度、位置、速度を数秒素早く切り替えることができ、瞬く間に注目を浴びる存在となりました。初代グリペンの誕生以来、サーブ社はこの戦闘機の各バージョンを、それまでのものよりも技術的にさらに進化させ、パワフルで、高速にすることを課題とし、提供してきました。しかし、グリペンの持つ複雑性と統合性のレベルは、エンジニアリング開発能力を急速に上回っていました。サーブ社はエンジニアリングのスキルを無駄にすることなく、戦闘機の性能要求を満たす方法を見出す必要がありました。この課題に対し、2000年代前半にモデルベースシステムエンジニアリングの手法を導入し、戦闘機をデジタル分析し、より迅速かつスマートな製品設計の決定を行うようになりました。 

課題

サーブ社がシステムエンジニアリング技術でグリペン戦闘機の改良を始める前に、最新のグリペンシリーズの構造と挙動をデジタルモデル内で再現する方法が必要でした。オリジナルの戦闘機のそれぞれのサブシステムは、複数の依存関係を持ちながら正確に作成されていたため、難しい作業でした。サーブ社が作成するグリペン戦闘機のモデルは、以下を考慮して作成する必要があります。 

  1. 航空機が高度間を高速で行き来する際に生じる急激な温度と圧力の変化
  2. 周囲の湿度に敏感なエアサイクル冷却システム  
  3. 15基の燃料タンクが一緒に取り付けられており、戦闘機の姿勢の変化に合わせて調整する必要がある複雑さ

 

Saab Gripen fighter
図1: グリペンの燃料システムとタンク

サーブ社は要件を定めた後、グリペンの正確な物理システムおよびサブシステムモデルを構築するために使用できるモデリングソリューションを探すことになりました。そのソリューションは、高忠実度の物理現象を正確に捉えることができ、かつ既存のツールセットやプロセスと統合できるものである必要がありました。しかし、この2つの条件を満たす適切なソリューションを見つけるのには苦労しました。評価したソリューションの多くは、忠実度の高いシステムモデルを構築してシミュレーションを行い、確かな結果を得るには、あまりにも簡易的で、高忠実度の物理モデリングを可能にするソリューションを既存の技術と統合することができませんでした。

解決策

では、自分たちの基準に合うモデリングソリューションが見つからなかったとき、サーブ社はどうしたのでしょうか?彼らは、モデロン協力のもと、独自に開発をしました現在そして将来の技術をモデリングするための柔軟性を必要としていたため、オープンスタンダードの技術を使用したいと考えていました。そして、モデロンが正確な物理モデリングに最適なオープンスタンダード言語であるModelicaを使用していることを知り、このコラボレーションが非常に適していることを知りました。 

2005 年、サーブ社はモデロンと提携し、グリペンの冷却および燃料システムを正確に表現するライブラリを開発し、信頼性の高いシミュ レーション結果を得ることができました。サーブ社のシミュレーションチームが各ライブラリコンポーネントの要件を定義し、モデロンは業界の専門知識を活用して、サーブ社の仕様に合わせてコンポーネントを開発しました。サーブチームをより良くサポートするため、グリペンのコンポーネントをもとにシステムモデルを開発し、サーブ社のエンジニアに先手を打ったのです。 

「信頼できるコンポーネントのライブラリでモデルを構築した最大のメリットは、エンジニアの思考を支援できることでした。我々のチームは、システムアーキテクチャがどのようにレイアウトされ、どこに変更が必要なのかをより明確に把握することができました。」 サーブ エアロノーティクス社 車両システムコンセプト設計・モデリング・シミュレーション担当マネージャー Peter Gotenstam氏。 

  

MBSE Components in Modelon Impact
図2: モデロンの燃料システムライブラリと環境制御ライブラリでモデル化されたグリペンの燃料システムと冷却システム

そして、それは Modelica ライブラリコンポーネントの提供にとどまりませんでした。サーブ社 モデロン は、モデルが サーブ社 のエンジニアリングワークフローに導入される際に、 チームをサポートするため、引き続き共同作業を行いました。 サーブチームは、冷却システムや燃料システムのシミュレーションで行き詰まった際、モデロンに連絡を取り、課題を解決するための指示をすぐに得ることができました。モデロンのサポートとカスタムライブラリは、サーブ社が グリペンを前進させるために必要なシステムモデル を作成するのに役立ちました。「モデロンの技術は私たちにぴったりです。モデルは、ユースケースに応じて、実際のグリペンの望ましい範囲内で結果を出すことができます。このことは、私たちの製品と設計の方向性に大きな信頼を与えてくれます。サーブ エアロノーティクス社 車両システムコンセプト設計・モデリング・シミュレーション担当マネージャー Peter Gotenstam氏。

結果

モデロンの専門知識とサービスをモデルベース システムエンジニアリングアプローチに統合し、サーブ社は2018年にグリペンEシリーズを発売しました。この新シリーズは、新しい航空電子工学や兵装搭載量の増加、より強力なエンジンなど、オリジナルのグリペンCシリーズから大幅に設計を改良しました。 

「モデルベースシステムエンジニアリングがなければ、複雑さに圧倒され、グリペンEを実現することはできなかったでしょう。現在では、複雑さが増しているにもかかわらず、制御を取り戻すことができるだけでなく、グリペンの新バージョンが出るたびに、初飛行に至る時間を短縮することができています。」 サーブ エアロノーティクス社車両システムコンセプト設計・モデリング・シミュレーション担当マネージャー Peter Gotenstam氏。 

カスタムライブラリに関しては、サーブ社およびモデロンは、燃料システムライブラリ環境制御ライブラリを商業的に誰もが利用できるようになるまで進化させました。これらのライブラリは現在、モデロンのクラウドベースのシステムシミュレーションプラットフォームであるModelon Impactに統合され、すぐに利用することができます。 

今日、サーブ社はモデロンと引き続き連携しています。航空機に搭載される電力の需要が高まるにつれ、電力生成に関する統合と理解の必要性が高まっています。航空機に新たな電気負荷が加わると、電力供給、配電、熱管理を正確にモデル化することへの要求が強まります。モデロンの幅広いポートフォリオにより、ゼロから新しいものを開発する代わりに、すぐに利用できる物理ベースのモデリングライブラリに頼ることができるようになりました。さらに、モデロンはユーザーとの話し合いにより、常にモデルの予測能力を向上させています。 

「最近の燃料システムライブラリは、タンクの予測精度を劇的に向上させるワークフローを提供しているのでぜひとも試してみたいと思っています!」サーブ エアロノーティクス 車両システムコンセプト設計・モデリング・シミュレーション担当 マネージャー Peter Gotenstam氏。 

メッセージを送信

Oops! We could not locate your form.