システムシミュレーションで 全電動ソーラードライブを 急成長へと導く
Lightyear社は、「Lightyear 0」の車両開発を迅速かつ円滑に進めるため、Modelonを採用しました。
課題
Lightyear社のミッションはシンプルでありながらインパクトのあるもの – すべての人、すべての場所にクリーンな移動手段を提供することです。充電インフラやエネルギーグリッド不足を解消せずに、自動車メーカーが持続可能な技術の要求に応えることは困難であると、Lightyear社が認識したことが始まりでした。移動をより効率的で持続可能なものにし、誰もが利用可能とするために、Lightyear社のイノベーターたちは「Lightyear 0」を開発しました。太陽光発電だけで1日に70キロの距離が走行可能で、消費電力は現在の電気自動車の半分から3分の1以下で走るオールソーラー電気自動車を開発しました。
ゼロからのスタートだったLightyear社は、何よりも「Lightyear 0」の効率性を優先させる必要がありました。軽量な部品と製品全体の目標達成に優れたシステム構造を採用するなど、よりスマートなシステム設計のための決断が必要でした。Lightyear社は、高性能、軽量素材、最適な効率性を備えた新型車のシステムを、最も時間と費用対効果が高い方法で設計するにはどうしたらよいのか、その答えを求めて、彼らはModelonのシミュレーション技術に着目しました。
解決策
Lightyear 社では航続距離延長が可能な大きな電池を設計するのではなく、より軽量で、より少ない電力で作動する小型の電池を設計することにしました。多くの企業がシステムエンジニアリングとシステムシミュレーションをエンジニアリングプロセスの別々の部門として扱うのに対し、Lightyear社のサーマルエンジニアであるSapfo Tsoutsou氏は共同アプローチで、課題に取り組みました。「システムシミュレーションとシステムエンジニアリングは別分野だとは思っていません。実は、相互補完しているのです。ステークホルダーの最小要件が提示されたり、変更されたりした場合、システムエンジニアが作成した基本アーキテクチャモデルでこれらの要件をテストできるのは強みです。例えば、重量を20%減らしたバッテリーの航続距離を確認したい場合、シミュレーションによって時間を節約でき、プロセスの早い段階で判断を後回しにすることなく決断が可能となります。」サーマルチームは、Modelon Impact とそのプラットフォー ムに含まれる Modelicaベースの熱・油圧コンポーネント ライブラリを使用して、「Lightyear 0 」のバッテリーと パワートレインを制御する熱管理システムを最適化しました。「Lightyear 0」の最初のプロトタイプの構造では、バッテリーとドライブトレインの冷却システムに 3 つのポンプが搭載されていました。モーターやインバーターなどのコンポーネントが変化し始めたとき、Lightyear社は3つのポンプを2つにすることで制御を改善できないかと考えました。そこで、Modelon Impact を使用して 2 台のポンプ設計を最適化し、シミュレー ションを行ったところ、システム設計を実際に簡素化でき、試作車のバッテリーのパッケージングと重量を削減できることが分かりました。
結果
Modelon Impactは、現在Lightyear社のエンジニアリング設計プロセスに不可欠なツールとなっています。サーマルチームにとっての大きな成果は、システム設計に要する時間が短縮されたことです。例えば、以前のシステムシミュレーションプラットフォームでは30時間かかっていた小さな油圧システムの設計が、今では1.5時間でできるようになりました。
Lightyear社が他のシミュレーションプラットフォームではなくModelonを選択した主な理由は、Modelon Impact に検証済みの物理モデルが含まれていることにより、サーマルチーム時間短縮を可能にした為です。Sapfo 氏と彼女のチームは、検証済みのモデルに対してカスタムの微調整を行い、多くの時間を費やす前に、設計が自分たちにとって有効かどうかを迅速に理解することができました。「Modelon Impactの検証済みモデルが他のプロバイダー のモデルと異なる点は、それが物理システムモデルであることです。私たちが検討した他のプラットフォームは、物理システムに特化した即利用可能なコンテンツを提供していませんでした。加えて、Modelon Impactのモデルは実用スケールで検証されているため、信頼できる結果を得ることができます。」
さらに、システムをシミュレートするために、Modelica の深い知識は不要でした。Lightyear社のチームにはModelicaに精通した社員が1名いたものの、サーマルチームのメンバーの多くはModelon Impactを十分活用することができました。「Modelon のサポートは非常に素晴らしい。問題が発生した場合、Modelonのサポートチームに連絡すればその日のうちに返答が来ます。私たちの問題は、あっという間に解決します。」– Lightyear社 サーマル・エンジニア Sapfo Tsoutsou氏
最終的に、「Lightyear 0」のプロトタイプ設計をモデル化、テスト、シミュレーションできるようになったことで、Lightyear社は物理プロトタイプのコストを削減し、性能要件を満たし、「Lightyear 0」の市場投入スケジュールを達成することができました。Lightyear社のシミュレーションの道のりは、熱管理システム全体を改良するために、Modelon社と共に現在も継続しています。
2022年、Lightyear社はヨーロッパ内で初の「Lightyear 0」を生産、出荷予定です。946台の限定生産となる「Lightyear 0」 は、電気自動車によるソーラードライブ技術の実現可能性を証明し、2025年までにヨーロッパ、アジア、米国で発売予定のLightyear社のマス市場向け次期モデルである「Lightyear Two」開発へと続く道を開くために設計されています。