What is physical system simulation?

物理システムシミュレーションは、設計コストや運用コストを削減し、新製品の市場投入までの時間を短縮する上で、大きな効果を発揮することができます。物理システムシミュレーションは難しい概念ですが、製品設計プロセスを仮想化するためには避けて通れない道です。Success with Simulationシリーズの最初のブログでは、弊社のシニアビジネスディベロップメントディレクターであるPieter Dermontが、物理システムシミュレーションとは何か、物理システムシミュレーションではないものは何か(それは「システム工学」ではありません)、そして貴社に提供できることは何か、についてご説明します。

物理システムシミュレーションは、システムレベルでの意思決定に最適な精度を提供します

シミュレーションの世界では、常にモデルの詳細度と計算時間のトレードオフに悩まされます。モデルとは、物理世界を多かれ少なかれ表現したものであり、シミュレーションに必要な詳細データが多ければ多いほど、その作業の計算コストが高くなります。計算コストの高いモデルはシミュレーションに時間がかかり、それが必要なケースもあり ますが、シミュレーションの結果を素早く出すためには、適切な量の詳細情報を入力する方が良い場合があります。シミュレーション結果が高速に出れば、エンジニアは設計(およびそれに続くモデル)をより頻繁に更新でき、製品設計サイクル全体を通じてより迅速に実験と反復を行うことができます。

例えば、シミュレーション手法の中には、比較的計算コストが高いにもかかわらず、高度な詳細データを取得することが可能なものがあります。これらは2Dまたは3Dのコンポーネントレベルのシミュレーションに使用されることが多く、1つまたは2つの物理領域の相互作用に限定されることが多いのが特徴です。計算流体力学と有限要素法は、一般的にこのカテゴリーに入る手法です。計算流体力学は、流体の流れのみに焦点を当て、場合によっては化学的または熱的な物理領域の相互作用も考慮します。しかし、システムのシミュレーションを実行するには、これらの方法では計算コストが高額になります。その代わりに、システムシミュレーションでは、無次元または1次元の効果に重点が置かれます。

システムのシミュレーションを行い、システムレベルで意義ある工学的洞察をタイムリーに得るためには、どのような詳細や物理現象をモデルに含めるべきかということが問題になります。

物理システムシミュレーションは、システムを再現することにフォーカスしているため、高速なパフォーマンスと完全なシステムを捉える能力と引き換えに、コンポーネントの詳細を損ねてしまいます。これは、システムシミュレーションの精度や予測精度が低いということではなく、すべてのパラダイムで、パラメトリック化、キャリブレーション、バリデーションに十分な注意を払う必要があるということです。むしろ、システムシミュレーションは、システムレベルに関連する物理現象を捉えることに重点を置いていることを意味します。

たとえば、図 1 に示す液化空気エネルギー貯蔵シス テムモデルには、システム全体の解析に必要な詳細度が適切に設定されています。このモデルでは、流体が各コンポーネントでどのような変化を受けるかによって、流体の熱力学的な状態を追跡することができます。そのため、システムレベルでの意思決定を行うことができます。

Physical system simulation enables you to make decisions on the system level, through utilizing predictive component models with moderate fidelity and analyze their interactions.
図1:物理システムシミュレーションでは、適度に精度の高い予測部品モデルを活用し、その相互作用を分析することで、システムレベルでの意思決定を行うことができます。

物理システムシミュレーションによる予測能力

物理システムシミュレーションは、物理を正確に表現するための機能を備えています。

エンジニアが自身の物理システム内での正しい記述を検討すべき際、「物理」をうまく表現するシミュレーションパラダイムを使用することが非常に重要です。この物理的な記述は、物理システム・モデリングの2つの主要な機能によって可能となります。

  1. 第一原理方程式は、質量、エネルギー、運動量の保存など、我々の物理世界を支配する基本的な法則です。これらの法則は、物理システムモデルの挙動も支配しています。
  2. 経験式は、第一原理方程式では表現しきれない圧力損失、熱伝導、摩擦などの現象をシステムレベルで表現する関係です。これらの経験式は、実験的研究と多くの場合は、パラメータフィッティングの実践によって決定されます。

この2つの組み合わせにより、物理システムシミュレーションは予測能力を持ち、純粋にデータに基づく物理システムシミュレーションのアプローチと比較して優位性を保持しています。この基盤により、機械、流体、伝熱、電気、化学、磁気など、さまざまな物理領域を正確に表現するモデルを構築することができます。また、各領域の相互作用を考慮したマルチフィジックスなシステムモデルを構築することができます。

優れた物理システムシミュレーションツールは、他のシステムとは異なり、物理システムのシミュレーションに関連する機能を備えています。そのような機能には、物理量の単位を扱う機能、物理量とモデルのグループ化、第一原理方程式の再利用、関連する経験式の適切な選択、などがあります。複雑性は指数関数的に急激に増大し、これらの機能はモデルを扱う上で最重要となります。

これに対して、確立された汎用言語や科学的なスクリプト言語を用いて物理システムを表現した場合、モデルの記述に不必要な複雑性が急速に追加されます。複雑性は、製品開発サイクルのスピードと品質の低下を招きます。設計エンジニアはヒューマンエラーを起こしやすいものですが、適切な物理システムシミュレーションツールを使用することで、これらの問題を解決し、製品設計の反復をスピードアップすることができます。

図2のモデルは、航空機の物理現象をシステムレベルで予測する物理システムシミュレーションで あり、航空機の各サブシステムに関連する様々な物理領域を網羅しています。各サブシステムの挙動は、第一原理方程式と経験的関係によって支配されます。弊社のライブラリコンテンツは、数値的なロバスト性と、高いパフォーマンス性、再利用可能な第一原理方程式と経験式コレクションを、文書化されたコンポーネントモデルとして一括化し提供しています。物理を自分で記述する必要がなく、モデルベース設計にかかる時間とコストを大幅に削減することができます。

This model represents an aircraft’s true multi-physics system (from left to right): the airframe (mechanics), the power plant (traditionally, a mechanical-thermo-fluid system), and the auxiliary systems (fluids, electrical, etc.).
図2:このモデルは、航空機の真のマルチフィジックスシステム(左から順に)機体(力学)、パワープラント(従来は力学-熱流体系)、補助システム(流体、電気など)を表しています。

物理システムシミュレーションに特化した技術は、物理言語を用いて、モデルの複雑度管理を通じてシステムに関する重要な工学的判断を下す為の最適な精度を提供します。同じシステムモデル内で、機械、流体、熱伝導、電気、化学、磁気などの物理現象を容易に記述することができます。

物理システムシミュレーション vs システムズエンジニアリング

物理システムシミュレーションは、システムズエンジニアリングとの違いを見てみましょう。システムエンジニアリングは、異なるサブシステムやコンポーネントがどのように相互作用するか着目するパラダイムであり、相互作用を成功させるための要件にフォーカスします。各コンポーネントやサブシステムの挙動を予測する能力は必ずしも備えていません。

結論

あるシミュレーションシナリオに対して、どのシミュレーションパラダイムを使うべきかという厳密なガイドラインはなく、多くのコーナーケースが存在します。各パラダイムは、複雑性とエンジニアのミッションとのトレードオフの範囲に拡大しています。したがって、モデルの詳細度に対する特定の好みはなく、むしろ、それぞれのタスクに適したモデリングパラダイムとモデルの複雑性を選択することが望まれているのです。

物理システムシミュレーションは、設計プロセスの早い段階で設計の意思決定を行い、アーキテクチャと最適化をサポートし、後に検証タスクを実行するために極めて重要です。また、物理システムシミュレーションは、資産の運用改善やデジタル・ツインの開発にも最適な手法です。今後も物理システムシミュレーションの利用時期、設計プロセスにおける位置づけなど、さまざまな物理システムシミュレーションに関連するコンテンツをお届けします。