マルチボディビークルダイナミクス:Modelon Impact 上で効果的なサスペンションモデルを設計

本ブログでは、弊社の車両ダイナミクスライブラリ (Vehicle Dynamics Library) を Modelon Impact で利用することにより、 サスペンションシステム の構築並びにシミュレーションを効率良く実施した事例をご紹介します。 Modelon Impact には定常シミュレーションソルバ並びに複数シミュレーションの自動実行機能が備わっているため、 マルチボディビークルダイナミクス における定常解析を短時間で精度良く実行することができます。また、弊社の公開している API を利用して Web アプリとして展開することも可能です。
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車両ダイナミクスライブラリで サスペンションモデル を設計
Modelon Impact には、マルチフィジックスに対応したわかりやすいライブラリが標準で用意されています。これにより、ドラッグ&ドロップ操作だけで構築済みのモデルやコンポーネントを利用することができ、それはここで紹介する車両ダイナミクスライブラリの場合でも同様です。 2004 年にリリースして以来、車両ダイナミクスライブラリは乗用車からモータースポーツや大型輸送車両に至るまで、自動車業界で幅広く活用されてきました。
本ライブラリはサスペンションやホイール、パワートレイン、ブレーキなどの典型的な マルチボディビークル の主要なサブシステムを網羅しています。 Modelica のマルチフィジックス機能を基に構築されているため、弊社の電動化ライブラリや油圧ライブラリ、空気圧ライブラリなどの他のライブラリ製品のコンポーネントを追加することも容易です。
車両ダイナミクスライブラリでは、サスペンションに関しても多数の種類を用意しています。従来からあるマクファーソン・ストラット式やダブルウィッシュボーン式だけでなく、例えば乗用車向けには比較的新しいマルチリンク式サスペンションも提供されています。また大型トラック向けには、ツイストビーム式リアサスペンションをはじめとする様々なリジッドアクスルタイプのモデルも用意されています。

各サスペンションのテンプレートモデル内のマウントやスイッチ部分は入れ替えや切り替えが可能なため、スタビライザやスプリング、ダンパサスペンション等の要素の取付け方や取付位置を簡単に変更することが可能です。
Modelon Impact での サスペンションモデル の設計検討
Modelon Impact の定常シミュレーション機能により、車両ダイナミクスライブラリを使用したサスペンションモデルの解析を、より幅広い範囲で実施できます。サスペンションモデルはリグに固定されており、その上で上下方向のストロークや左右方向のステアリング操作が境界条件として与えられます。そのモデルに対して定常シミュレーションを実行すると、全ての時間微分項はゼロの状態での計算となり、したがってダンパとサスペンションブッシュで生じる減衰力をすべて除外した解析が行われます。ソルバは硬いブッシュの動的状態を処理する必要がないため、タイヤの上下動やステアリングによってサスペンションを動的にスイープするよりも、それぞれの位置での定常シミュレーションの解を求める方が効率的です。また、このアプローチでは動的な影響が結果に影響しないため、精度が向上します。
与えられたサスペンションモデルに対してタイヤ上下動時の各位置毎に定常シミュレーションを実行することで、それぞれにおけるハブの位置や方向を得ることができます。以下は、車両ダイナミクスライブラリのフォーリンク式サスペンションモデルを使用した、タイヤの +/- 100mm の上下動時の解析結果です。

使用した位置の周辺でもシミュレーションを追加で実施し差分を取ることでタイヤ上下動によるトー角やキャンバー角の変化が得られ、バンプステアやキャンバーゲイン等のサスペンション特性を求めることができます。さらに、ステアリング角やタイヤ上下動に対する変化を求めることで、その瞬間のサスペンションのキングピン軸とスイングアームを測定することもできます。キングピン軸とスイングアームによって、その瞬間のサスペンションの回転中心が求まります。

Modelon Impact の複数シミュレーションの自動実行機能機能を使用し、設定したサスペンション諸元におけるパラメータスイープの実行やや特性の解析を繰り返すことができ、その変更がどのようにサスペンションの挙動に影響するかを評価できます。図1は、アウターステアリンクジョイントを横方向に +/- 50 mm の範囲で変更した際の、タイヤ上下動に対するトー角の変化を示しています。

サスペンション解析の Web アプリへの展開
Modelon Impact を使用する利点の一つとして、このような解析を組織内の多くの対象者に展開できることが挙げられます。例えばサスペンションモデルに精通していないものの業務上その解析結果を必要とするような方が Web アプリを使用する対象ユーザとなるでしょう。 CAD ソフトウェアを利用するサスペンションモデルの設計者であれば、 マルチボディビークルダイナミクス を利用して様々な設計モデルによる影響を素早く確認できるでしょう。
図2は、 Impact Python Client の利用により、 Jupyter Notebook でサスペンションの各ハードポイントを変更しシミュレーションによりその結果を確認できるGUIを作成したものです。

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もちろん Python や Jupyter Notebook に関する知識があれば、スクリプトやノートブックの作成によって独自のシミュレーションを実行させることも可能でしょう。
結論
Modelon Impact で利用可能な定常シミュレーション、複数シミュレーションの自動実行、および展開機能をうまく活用することで、車両ダイナミクスライブラリはさらに強い力を発揮します。マルチボディビークルに対するシミュレーションは、定常状態に対応したソルバの利用によってより迅速かつ正確になります。複数シミュレーションの自動実行により、より多くのパラメータの組合せを検討でき、またその機能の展開によってより多くのユーザが必要な答えにアクセスできるようになります。
Modelon Impact で VDL のデモをご覧になりたい方はこちらからお問い合わせくださいJm5ic3A7